本文へスキップ

ART SQUAREは三浦明範の作品と絵画技法・材料のサイトです。

 

15世紀フランドル絵画の技法と材料

模写作品:ヤン・ファン・アイク 模写作品

模写作品:ハンス・メムリンク


 15世紀フランドル絵画の支持体は額縁と一体で作られ、そのすべてがオーク材である。プレパレーションとして白亜地が施され、アンダードローイングは、インク、ビスタ、ブラック・チョーク、木炭などで行われた。そして、この上から絶縁層として乾性油が塗布された。
 色材は、ラピスラズリ、アズライト、ブルー・ヴェルディター、スマルト、ラピスラズリ灰、インジゴ、ラックムス、マダー・レーキ、ケルメス、ヴァーミリオン、ミニウム、レッド・オーカー、マラカイト、ヴェルディグリ、樹脂酸銅、緑土、鉛白、シェル・ホワイト、アンバー、ボーン(チャコール、ランプ)・ブラック、マシコット、鉛錫黄である。この絵具層は、乾性油と未確認の物質で構成されているが、アイクの絵具層からは動物性蛋白質が検出されている。この事から、展色材は、膠と乾性油のエマルジョンと推察される。しかし、15世紀の後期では、現在のメディウムとそれほど差異のないものになっていたと思われる。
 この確認のため、エマルジョンの展色材を作る試験を行った。その結果、アイクの展色材はスタンド・リンシード・オイルと膠のエマルジョンが最も合致した。しかし、メムリンクの場合は、乾性油単独、もしくは樹脂成分を含むものである。
 これらは、ヤン・ファン・アイクとハンス・メムリンクの模写を行うことにより、検証された。
(女子美術大学紀要第29号 1999年)

 


  


inserted by FC2 system